【農のスキマにピントを合わせて #002】ベランダに土を置くという冒険。“育てる準備”から始まる菜園の時間
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プランターを並べ、鉢底ネットを敷き、土を入れる。ただの準備作業も、家庭菜園初心者の我々にとっては発見の連続。“未来を育てる時間”のために、今できることを重ねていきます。
写真・文:吉田達史(Photographer)
📸 今日の1枚
「鉢底石をお宝のように掲げる息子」

まずは、プランターを並べる場所を決める。それだけのことなのに、意外と悩む。我が家のベランダは、おそらく関東の賃貸ではよくあるサイズ。160cm × 280cm。広くはない。でも風通しはよく、陽も差す。あとは、室外機の風だけがちょっとした懸念材料。

まずは長男と一緒に、“ベランダの畝づくり”に取りかかる。もちろん、土を掘るわけではない。
42Lのプランターを2台並べ、その下にレンガを置き、流れ落ちる水の行き先と家族の通り道を想像しながら、じっくり配置を決めていく。

長男にとっては、レンガも立派な“遊び道具”。積んで、ずらして、また戻して。
小さな指先に、何かの設計図が浮かんでいるようにも見える。
苗たちを迎える準備

プランターの底に、まずネットを敷く。そして鉢底石を投入。
これで水はけが良くなる=根が喜ぶ。このあたりは事前に“予習”した内容の通り。
でも…。ふと手が止まる。
「この土、本当に合ってるのか?」
「肥料はこれでいいんだっけ……?」
予習してもなお、初心者には不安がつきまとう。
けれど、今は“正解を目指す”よりも、「一緒に失敗して、一緒に笑える」方を選びたい。
土は“未来への借りもの”かもしれない

実は今回、鉢底ネットを使ったのにはもうひとつ理由がある。
「土を再利用したい」のだ。
野菜栽培のあとの土は、栄養が抜け、水はけも悪くなりがち。でも、家庭菜園の土って、ゴミとして出すのもなかなか難しい。
(最近は“捨てられる土”も売っているようだけれど、それはまた別の話)

だからこそ、鉢底石が土に混ざらないようにしておきたい。
来年、また別の苗を植えるとき、少しでも気持ちよくスタートできるように。

土を管理するって、ちょっと未来の自分に、思いやりを持つことなのかもしれない。
今日もまた、ひとつ景色が変わった

まだ何も植えていない。
けれど、土が入り、プランターが並び、ベランダの景色は少し変わった。
そして今、息子はスコップを振り回している。
「これでナスも掘れる?」と聞いてくるが、それはどうだろう。
明日は、いよいよ苗を植える日。子どもの背丈と同じくらいの野菜が育つかどうかはわからないけれど、
“その時間”が育っているのは、もう確かだ。







