放置畑を“自分たちの場所”へ。ユンボと菌ちゃん農法が導いた畑再生の物語【編集部員日記・中編】
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横浜で最も「農」がアツい地域で、荒れた畑を再び耕す「みんなの畑」プロジェクト。編集部員の筆者が再開墾に挑戦する前編に続く本記事では、重機を使った天地返し、高畝づくり、菌ちゃん農法による土づくりの様子をレポートします。“自分たちの畑”という実感が次第に芽吹いていく、筋肉痛とドヤ顔が耕す畑のリアルストーリー!
ユンボの力で、土が呼吸を取り戻す!

2025年2月、いよいよ畑本体の再生がスタートしました。
土づくりの第一歩は天地返しからやると決めたものの、人力では厳しいことは素人目にもわかっていました。
ここはユンボ(自走式油圧ショベル)の力が必要だ!
そう思い、リース会社に見積もりをとると2泊3日で7万円超え…。
けっこうな歯応えの金額です。
この「みんなの畑」プロジェクトは会費制で、使える予算には限りがあります。
さて、ユンボに7万円もかけていいものか…。
頭を悩ませていると、プロジェクトメンバーが「うちの会社なら社員価格でユンボを借りれるよ」と言うじゃありませんか!
金額を聞けば4万円代で借りられるということなので、即予約。
普段の暮らしで重機を見る機会は少ないので、子どもたちも(大人も!)ユンボの到着を心待ちにしていたのでした。

そしてやってきた“あいつ”。そう、我らの(借り物だけど)ユンボです。
「ユンボ!……ユンボ!!……ユンボ~~~!!!」
子どもも大人も、テンション爆上がりです。


結論、ユンボの力は凄い!
人力では歯が立たない雑草の根っこも、ユンボならガリッと一撃で掘り返せます。作業スピードの早さが桁違いすぎて、人間の非力さも痛感しました。
とはいえ、ユンボがすべての作業を全うできるわけではありません。
地中から出てきた根っこを取り除くのは子どもたちの役目で、みんな大活躍していました!
菌ちゃん農法をお手本に土づくり

3月に入ると、本格的な土づくりが始まりました。
土づくりには様々な考え方があって、正解がないようにも思いますが、自分なりの答えを見つけないと始まりません。
私がもともと「発酵」に興味があったこともあり、土づくりについて調べていくうちに「炭素循環農法」というスタイルにたどり着きます。
この農法では化学肥料や農薬を使わずに、発酵の力で糸状菌や窒素固定細菌の働きを活発化させ、元気な土で野菜を育てるというもの。
農業指導者・吉田俊道さんが提唱して話題となった「菌ちゃん農法」も、この炭素循環農法が原型になっています。

というわけで、みんなの畑では、下記「菌ちゃん農法」で推奨される土づくりを採用することに。
- 高畝を立てる
- 竹チップや枯葉などの炭素資材を投入する
- 降雨を待ってから黒マルチを張る
- 糸状菌の繁殖を待つ


別に無農薬にこだわりたいわけではなく、「肥料や農薬を使わずに済むならそのほうがいいし、なにより費用が節約できる」というリアルなお財布事情と、「畑の周りに炭素資材があるんだったら、それでやってみよう」というシンプルな発想なのです。
全身を鍛え直す、畝立て健康法!?

これまでの作業を振り返って、最もキツかったのは畝立てでした。
みんなの畑では、高さ50~60㎝の畝を立てるので、スコップで土をすくう作業を朝9時から15時頃までやり続けます。
大人4人がかりでやっても、1日2本の畝立てが限界。もちろん途中に休憩をはさみますが、上半身と下半身を6時間も酷使すると、翌日には筋肉痛という苦しみが待ち受けているわけです。
私は筋肉痛の裏腿をさすりながら、「筋力・持久力・心肺機能の向上に効果的で、ダイエット効果が期待できる畝立て健康法」の提唱を模索するのでした(笑)。


冗談はさておき、畝の中には枯竹や畑のわきに放置していた雑草や枯葉を仕込み、糸状菌や窒素固定細菌が繁殖しやすい環境をつくります。仕上げに黒マルチを張って、子どもたちがマルチ穴をカッターであけていきます。
「大人より上手じゃないか…」
ちょっとくやしい気持ちになりながら、子どもたちのドヤ顔に癒やされました。
みんなの畑が〝みんなの畑″になった日

畝立てと並行して進んでいたのが、みんなの畑の看板づくりでした。
「子どもたちに、この畑に看板を掲げてもらおう!」
用意したのは、ベニヤ板とセメント、そして知人の工務店の倉庫に眠っていたLIXILのタイル。


ハンマーで叩き割ったタイルをベニヤ板に貼り、セメントを流し込んで、文字をかたどっていきます。
細かい作業もあって大変と言えば大変でしたが、子どもたちもお母さんたちも、手を止めずに黙々と作業を楽しんでいました。
どこに設置するかはまだ検討中なので、記念写真を撮るのはこれからですが、看板が出来上がって名実ともに“みんなの畑”に!
ここまでにかかった費用は、およそ13.5万円

前編でレポートしたBBQ場の整備費用を含め、畑の畝立てまでにかかった費用は約13.5万円でした。
自分ひとりでこの費用を負担するのはちょっと重たいですが、「みんなで協力すれば安いよね」というのがプロジェクトメンバーの総意。
畑の隣でBBQができて、子どもたちが笑顔になれる場所づくりができたことに、大人たちは大満足なのでした。


でも、これで再開墾の挑戦が終わったわけではありません。むしろ、やっと野菜づくりのスタートラインに立ったばかり。
畝にマルチを張ってから3か月ほど糸状菌の繁殖を待つので、定植がスタートするのは5月末から6月上旬頃。
それまでの間は、雑草を刈ったり、BBQをしながら栽培計画を立てたり、のんびりと畑で過ごす予定です。
定植や収穫の様子も、またTSUCHILLでレポートしたいと思っています。
<費用内訳>
用途 | 金額 |
熊手・袋 | ¥3,900 |
テミ | ¥1,494 |
とんぼ | ¥5,368 |
刈り払い機用ガソリン | ¥1,780 |
防草シート | ¥11,093 |
人工芝一式 | ¥43,740 |
ユンボ燃料費 | ¥3,844 |
ユンボリース | ¥43,164 |
土壌検査キット | ¥7,942 |
黒マルチ | ¥4,100 |
マルチおさえ | ¥2,658 |
マルチ穴カッター | ¥666 |
じょうろ&ロープ&畝鍬 | ¥4,994 |
合計 | ¥134,743 |