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「野菜の種の保存時は○○厳禁!」「市販の種が最も安全?」。専門家に聞いた“タネのネタ”大公開!

趣味としての農業に興味津々♪ そんなあなたに耳打ちしたい豆知識をお届けするこのコーナー。今回は、作物の命の源とも言える「種」にまつわる雑学をご紹介します。教えてくれたのは、日本を代表する種苗メーカー「サカタのタネ」のみなさん。思わず「そうなんだ!」と叫びたくなるエピソードをお楽しみください!

Illustration:あおむろひろゆき / Text:TSUCHILL編集部


協力してくれたのは……

株式会社サカタのタネ

創業は大正2年。100年以上にわたって、プロの農家はもとより、家庭菜園や園芸の愛好家を支え続ける種苗メーカー。取り扱う種は、花・約90品目、約1500品種、野菜・約40品目、約350種。170カ国以上に向けて種を販売するグローバル企業でもある。今回は、新井裕之さん(お客様相談室)、杉本隆行さん、田崎未央さん(ともにコーポレートコミュケーション部)のお三方に話を伺った。


【種の雑学1】種苗メーカーが考える「よい商品」のポイントは5つある

ホームセンターなどで簡単に手に入るパッケージ入りの種ですが、実はとてもシビアなチェックを経て厳選され、商品化されているものだということを知っておいて損はありません。

種苗メーカーが、市場に出す商品に不可欠だと考える条件は主に5つあります。1つめは「発芽率が高く、同じタイミングで芽吹くこと」。2つめは「出来上がる作物の特徴や形、味が一定になること」

3つめは「種に病気がなく健康であること」。4つめは「別の種類の種が混ざるなど、異物の混入がないこと」

5つめは「種自体の活力が強く、適切な保管で一定期間の貯蔵が可能なこと」。これらの条件を満たした種だけが選抜されているからこそ、皆さんは気軽に植物の栽培を楽しめるのです。

市販されている種は、多くの人の目と手によって厳重に管理・選別されてきた「エリート集団」なのです。

【種の雑学2】パッケージの説明書きは、3カ所読めばなんとかなる

種のパッケージの裏面には、細かな説明や心得がたくさん書き込まれています。それらはすべて、栽培に失敗しないために必要な情報です。全部をよく読んでから種をまいたほうがいいに決まっています……が、「説明書を読むのが苦手」という方、いらっしゃいますよね。

そういう方でも、なんとか頑張って確認してほしいポイントが3カ所あります。それは、「まき時(作型図)」と「発芽適温(地温)」と「まき方」の部分です。種はまく時期と気温を間違えると、発芽しない可能性があります。

また、「まき方」の部分に書かれている、正しく種をまき、発芽させるために必要な準備も、作物をきちんと育てるためには必須事項。

言い方を変えれば、ここだけ押さえておけば、なんとかなったりもするのです。もちろん、よりよい結果を追求するのであれば、発芽したあとの栽培管理や、品種ごとの特徴など、他の項目もじっくりと目を通すべきなのは、言うまでもありません。

特に丸暗記する必要はありませんが、書かれているのは大事なことばかり。できるなら、隅々までしっかりと読み込んでくださいね。

【種の雑学3】種や苗は、通信販売の黎明期を支えていた商材だった

通信販売には、長い歴史があります。最近はネット通販が主流と言えますが、テレビ通販、カタログ通販という形も健在。店頭に足を運ばずに遠隔地から注文し、品物を届けてもらうという便利な買い物スタイルが確立したのは、19世紀のことだと言われています。

「通販の話と種、関係ないじゃん!」と、思った方もいるかもしれませんが、実は深い関係があるのです。1800年代のアメリカで、世界初の通販商材として扱われたのが、農家向けの「種苗」でした。

種苗を行き渡らせて農地を広げ、食糧自給をキープするだけでなく、よい品種が生まれればそれを全国に展開する。種苗の通販は、そういったアメリカの国策を下支えする存在だったのです。

ちなみに日本の通販は明治時代の初期に始まりましたが、そこで扱われたのも「種苗」。農業雑誌上の広告という形で、野菜の種が販売されたのがルーツだと言われています。

通販黎明期の交通手段が少ない時代、種や苗の長距離配達は大変だったと思います。運んでいる途中で種が芽吹いたり、苗が枯れちゃったりはしなかったんでしょうか!?

の雑学4】まき切れずに余った種は、湿気を避けて保管する

種を買ってみたら、思ったより数が多くてまききれなかった……というのはよくあること。そんな時「もったいないから翌年、翌々年以降のまき時期まで残しておこう」と考えがちですが、野菜の種には有効期限があります。

種の有効期限は、パッケージの裏面などに書かれていることが多く、その期限を過ぎると発芽率などが大幅に低下します。

とはいえ、期限切れの種であっても、正しく管理することで劣化を遅らせることが可能で、有効期限から1年以上経っても、ある程度の品質を維持できます。

では「正しい管理」とはどんなものなのか。

種の大敵は、水分(湿気)と高温(温度変化)です。長期間にわたって保存するためには、それを避けなくてはなりません。防湿パッケージに入っている市販の種は管理しやすいのですが、一度開封してしまったものについては、湿気を防ぐ処置が必要です。

できれば密閉容器に入れ、湿気と高温を避けられる場所で保管したいところ。余った種は、乾燥剤と一緒にジップ付きの袋かタッパーに入れて、20℃以下の室内に置くのがベスト。冷蔵庫でもよいですが、出し入れの際に発生しがちな結露には注意が必要です。

もちろん、パッケージに記載されている有効期限内にまくことが大前提ですよ。

「そんなに種を甘やかしていいのか!」なんていう声も聞こえてきそうですが、いいんです。甘やかすだけ甘やかした種は、きっと盛大な収穫をもたらしてくれるはず。

の雑学5】種苗メーカーが販売する種は、個人が育てた野菜から採った種と圧倒的に「質」が違う

種から野菜を育てると、いつかまた、その野菜が新しい種をもたらします。だったら「種を買うのは最初の一度だけでいいのでは?」なんて、多くの人は考えがち。しかし、そんなにうまくいくものではありません。

市販されている種と、自分で育てた野菜から採取した種は、「質」の面で、まったくと言っていいほど別物です。そもそも種苗メーカーは、野菜や花から取れた種を、そのまま販売しているわけではありません。

たとえばアサガオのような硬い種は、発芽率を高めるため、水分の吸収をよくする表面処置を講じることがあります。また、購入者のまきやすさを考慮して、砂粒よりも細かい種にコーティングを施すケースもあるのです。

本筋からは外れますが、「種を採る」という作業の難しさも無視できません。種を採るには時間も手間もかかります。そのうえ、採れた種がちゃんと発芽するかどうかは未知数。

というわけで、ストレスなく野菜の栽培を続けるなら、市販の種を使うほうが圧倒的に効率がよい……という結論が導き出されるわけです。

「おまえが欲しいのは、市販の種とこの畑で採れた種、どっちだい?」。畑の神様からそう問われたら、食い気味に「市販の種」と答えましょう。きっと神様も納得する……はず。

TSUCHILL編集部

暮らしの中に土いじりを。 家庭菜園や農作業を趣味として楽しむライフスタイルメディア「TSUCHILL」。
土いじりの”たのしみ”を拡張し、もっと広く深く愛されるカルチャーに。 #ツチる

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