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健康のレシピは畑で生まれる。「食」のあり方とリンクした、学びいっぱいの農作業

「農」のある暮らしを実践する人々にフォーカスする『農動的スタイル』は、趣味として、あるいは仕事や日常の一部として土いじりを楽しむファッションモデルのみなさんのライフスタイルをご紹介。

農作業へのこだわり、作業着へのこだわり、そして、「農」から始まったモノ・コト・トキ・イミを、自由に語っていただきます。

シリーズ4回目にご登場いただくのは山崎俊さん。「食」の大切さを追求するために、畑仕事に学びを求める、ストイックな姿勢に注目です。

Photo:木村武司/Text:溝口敏正


ひときわ目立つ長身を丸め、繊細な作業に没頭する

幼いころは自然溢れる環境の中で育ち、土と触れ合う日常は当たり前。物心ついた時には祖父の家庭菜園で手伝いをしていたといい、楽しかった小学校の思い出はサツマイモ堀り。

モデルとして活躍する今もなお、山崎俊さんの中には、子どものころに味わった「農の楽しみ」が息づいています。

「農作業は好きですね。定期的に事務所の先輩の農園に手伝いに行くのですが、与えられた作業をこなしているうちに集中してくるというか、その“瞬間”に入り込むというか。いつもあっという間に時間が過ぎていきますね」

186cmという体躯は、モデル向きであることはもちろん、畑での力仕事にも重宝するのでしょう。

ただ、時に長身を折り曲げるようにして、真摯に土や作物に向き合う姿を見ると、山崎さんが真剣に「農」について考え、作業に没頭していることがわかります。

「予防医療」と「カフェ」から逆算し、農作業に辿り着く

「好きなカラーは、ブルーグレーっぽい落ち着いた色合い。ちょうどこのジャケットのカラーがそうですね」(山崎さん)/ジャケット(マムート)グローブ、ボトムス(KEIMEN)

山崎さんの「農」にまつわる関心は、「食」という分野と密接に結びついています。モデル業と並行して、表参道のカフェ「L for You(エルフォーユー)」で店長を務める山崎さんは、食材に対する強いこだわりを持っています。

彩り豊かな季節の野菜を使ったランチプレートなど、野菜をふんだんに使ったメニューを提供するカフェをマネジメントしていくうえで、食材に関する知識は必須。

山崎さんが実際に畑で手を動かすのは、単なる趣味の範疇を超え、仕事をしていくうえでも重要な意味を持っているようです。

「母親は、添加物の入った食材を一切使わない人でした。食へのこだわりは、その影響が強いのかもしれません。

もちろん、お店で使う食材にもこだわっていて、毎朝、届いた野菜をチェックするのも仕事のひとつ

この野菜はどこから来たのか、どうやって作られたのかを常に気にしているからこそ、自分自身も畑に出て、野菜や農業のことを学ぶ必要性があると感じています」

「山間の畑のある場所は、急に気温が下がったり、突然雨が降ったりもするので、温度調節しやすいように重ね着を意識しています」(山崎さん)/ロングスリーブシャツ(ユニクロ)

職場であるカフェの親会社は、予防医療事業を展開する企業。山崎さんはモデル業の傍ら、その企業にも所属し、飲食部門の現場担当として店舗マネジメントに携わっています。

「予防医療というのは、病気になる前に自分の体のことをよく知り、適切な食事を摂り、適切な運動を取り入れ、長い目で健康的な生活を送ろうという考え方。

僕はこの考え方に100%賛同していて、だからこそ、この仕事を続けられているのだと思います。モデル業も自分の体が資本ですから、食事についてしっかり考えています。

カフェの仕事も、モデル業も、畑で農作業することも、全部つながっているんですよね」

あらゆる経験がリンクすることで、人生はより豊かになる

高校時代の山崎さんは、サッカーで全国優勝を経験したことがあるほどのアスリートでした。

名門サッカー部に所属し、仲間とポジション争いを続けるなかで、若くして健康と体のケアを追求し続けてきた山崎さん。

彼にとって、ケガや病気を防ぎ、最高のパフォーマンスを維持するために何が必要かを考えることは、ごく当たり前のことです。

「自分が口にするもの、カフェでお客様に提供するものが、どうやって作られているのかは、仕組みを含めて全部知っておきたいんです。

モデルとしてのパフォーマンスや、カフェでの仕事でもそうなんですが、自分がよく知らない状態で、“なんとなく”こなしていくのはイヤなんです。

だから、野菜のこと、作物の育ち方や肥料のこと、流通のことも含めて、まだまだたくさん勉強するべきことがあると思っています」

畑では、ひとり黙々と作業に集中するのが好きだという山崎さん。

「単純作業に熱中すると、集中力が上がって“ゾーン”に入った気がするんです。その瞬間がすごく好きなんですよ」と笑いますが、その一方で、人と人のつながりや、触れ合いを大切にしたいという思いも持ち合わせています。

「つながりのある人たちと触れ合いながら、それぞれが役割を持って、分業して、協力し合えるコミュニティのようなものに魅力を感じるんです。

家族もそうだし、カフェの同僚や、農作業をする仲間だってそれにあたります。

自分が属するコミュニティはいくつあってもいいと思うんです。それぞれがつながって、補い合って、“100”になればいいのかなって」

モデル業、飲食業、そして、農作業と、山崎さんの属するコミュニティは、自然、健康、食、農、といったキーワードを元にして、緩やかに絡み合い、山崎さんの人生そのものを豊かに演出してくれているようです。

「いつかは自分の畑で」。夢はどこまでも膨らんでいく

「モデル業って、普段の生活が滲み出る部分があるんです。僕の場合、いい意味でほんの少し”泥臭さ”みたいなものが乗っかっているかな。人間っぽさがや温かみが見える”有機的”なスタイルがあってもいいですよね」(山崎さん)

サッカーに明け暮れていた少年時代から、体を動かすために最適な服装を追求してきただけあって、農作業の際に身に着けるものについても、山崎さんなりのポリシーがあります。

動きの傾向、重心の置き方、そのこだわりを聞けば、農作業も一種のスポーツなのだと思えてきます。

「着るものは、全体的にゆとりのあるサイズのものがいいですね。作業中は立ったり座ったり、ダイナミックな動きをすることも少なくないので、より自由に動ける感覚があるものが好きです。

靴については、グリップが大事です。サッカーをやっていたせいか、下半身が安定しないと全身に力が入らないんですよね」

「畑で履くシューズは、ちょっとした登山に行く時に履いているものを使ってます。やっぱりグリップ力のあるものがいいですね」(山崎さん)/シューズ(サロモン)

常に自分を客観的に見つめ、最適な選択をし続ける山崎さん。怪我が理由でサッカーの道を断念しつつも、世界で活躍するという夢のためにモデルの世界に足を踏み入れ、10年が経ちました。

「食」と「農」にかかわる現在の日常も含め、すべてのキャリアがほのかに連動している点も、山崎さんが、自身の「心地よさ」と向き合いながら、ひたむきに走り続けた証明なのでしょう。

「実は、僕の婚約者がとても『食』にこだわる人で。モデルとして食事を節制をしていた時期に、『ちゃんと食べないと頭も回らないよ』とアドバイスをくれたりしたんです。

今でも結構うるさく言われたりもしますけど(笑)、常に言うことが理にかなっていて、僕自身のマインドも変わってきたような気がするんです」

いずれは自分の畑を持ち、野菜を育てることが、山崎さんの目標のひとつ。家族とともに、土と戯れ、さらなる充実感を得る日々は、もうすぐそこにあるのかもしれません。


<プロフィール>
山崎 俊
富山県出身。ファッション誌やアパレルブランドのカタログ、広告、TVCMなどで活躍中。KENZOやYProjectなどの海外コレクションにも多数参加するなど、国際的な舞台も経験している。高校時代には全国高校サッカー選手権で優勝。現在はモデル業の傍ら、予防医療事業を展開するアフロ―ドクリニックの飲食部門「L for You AOYAMA FLAG SHIP SHOP」にて、店舗マネジメントを担当している。

山崎さんのインスタグラム https://www.instagram.com/shunyamazaki


「農」を楽しむファッションモデルのライフスタイルを追った『農動的スタイル』シリーズの記事はこちら

溝口敏正

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